積算割合と実勢価格|積算100%超の物件ほど、まず実勢を疑う

積算割合と実勢価格:積算割合、実勢価格、家賃から出す値段の順に確かめる 用語集

積算割合とは、土地と建物の評価額(積算)が、売出価格の何割あるかを示す割合である。 つまり、評価額で価格をどこまで裏付けられるかを示す数字で、売れる値段(実勢価格)より高いか安いかは示しません。この記事では、100%を超える物件ほど実勢価格とのずれを疑う理由と、確かめ方を示します。

業者の資料に「積算100%超」と書かれた物件を見ると、割安に見えるものです。しかし、評価額が売出価格を上回っていても、近くで実際に売れる値段が、評価額と売出価格の両方より低い物件があります。

筆者も、土地の評価だけで売出価格の約1.3倍ある一棟を見送りました。近くで売れた土地の値段が、評価額と売出価格の両方を下回ったためです。

積算という言葉を聞いたことがある方向けの記事です。評価額の計算式から知りたい方は、積算価格とは|計算式と、持っている物件の借入と並べて分かることを先にお読みください。

結論

  1. 積算割合は「評価額(積算)÷売出価格」で求め、全体(土地と建物)と土地だけの2つに分けて見ます
  2. 積算割合が100%を超える物件を見たら、筆者は割安と決めつけず、まず路線価と実勢価格のずれを疑います。 路線価(国税庁が公表する、道路ごとの土地の値段)で出した評価額を、実勢価格が下回る地域があるためです
  3. 土地の評価額だけで売出価格を超える物件は、近くで売れた土地の1㎡あたりの値段(㎡単価)で確かめます。㎡単価の平均に土地の面積を掛けた金額が評価額と売出価格の両方を下回れば、高値づかみ(相場より高い値段で買うこと)です

積算割合とは:金融機関が見る評価額が、売出価格の何割あるか

積算割合は、物件の評価額(積算)を売出価格で割った割合です。評価額は、土地と建物を別々に評価して足した金額で、金融機関が担保の価値を見るときの基準になります。

積算割合 = 評価額(積算)÷ 売出価格

評価額は、土地を路線価から、建物を建て直す費用から年数の分を減らして出します。

積算割合は、全体と土地だけの2つに分けて見ます。建物の評価は年数とともに減るため、土地だけの割合が高い物件ほど、年数がたっても評価が残ります。

次のモデルケースで計算します(数字は説明のための例です)。売出価格5,000万円の、築30年の木造アパートで、土地の面積は300㎡、前面道路の路線価は1㎡あたり20万円とします。建物は税法の耐用年数(木造22年)を過ぎているため、前述の「積算価格とは」の式では評価額が0円になります。

土地の評価額 = 20万円/㎡ × 300㎡ = 6,000万円

積算割合 =(6,000万円 + 0円)÷ 5,000万円 = 120%

土地の割合 = 6,000万円 ÷ 5,000万円 = 120%

筆者の合格ラインは、積算割合80%以上、土地の割合(土地の評価額÷売出価格)50%以上です。合格ラインの決め方は、収益物件の選び方|融資より積算割合80%の線で決めるで書いています。

積算割合は、売出価格を評価額でどこまで裏付けられるかを示す指標です。売出価格が実勢価格より高いか安いかは、積算割合だけでは判断できません。

出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

積算割合が100%を超えたら、まず路線価と実勢価格のずれを疑う

積算割合が100%を超える物件を見たら、筆者は割安と決めつけず、路線価と実勢価格がずれていないかを先に疑います。 実勢価格は、その地域で実際に売買が成立した値段です。

路線価は、国税庁が地価公示価格(国が毎年公表する標準的な土地の価格)などを基にした価格の8割程度を目安に決める値です。ただし、個々の取引の値段ではないため、地域によっては実勢価格が、路線価で出した評価額を下回ります。

一棟は収益物件として売るのだから、土地の値段は関係ないのでは、と思う方もいるでしょう。困るのは、売るときです。次の買い手は、土地として売ることも選択肢に入れられます。

土地として売れる値段(実勢価格)が、自分が売りに出す価格を下回る物件は、値下げを求められやすくなります。次の買い手からの値下げの申込みを、指値といいます。自分の代では土地として売らなくても、次の買い手に指値をさせない物件を持つことが重要です。

名古屋市で検討した一棟は、筆者が資料の路線価で計算すると、土地の評価額だけで売出価格の約1.3倍ありました。ところが、近くで売れた土地の㎡単価に土地の面積を掛けると、その金額は評価額と売出価格の両方を下回っていました。そのため筆者は高値づかみになると判断し、この一棟を見送りました。

筆者は、ずれの理由を、敷地の擁壁(土地の段差を支える壁)、周辺の新築の多さ、家族で住む人の需要の薄さと見ていました。賃料が下がる心配もあり、家賃から出す値段(収益還元)も今後下がると見ていました。

埼玉県久喜市と千葉県佐倉市で筆者が見た物件でも、実勢価格が評価額を下回っていました。地方に限らず、名古屋市のような大都市や首都圏の郊外でも、積算割合の高さだけでは割安と判断できない物件がありました。

モデルケース(前の節の物件。実勢価格の出し方は次の節)で、3つの金額を並べると次のようになります。

評価額・売出価格・実勢価格の比較(モデルケース) モデルケース。路線価で計算した評価額は6,000万円、売出価格は5,000万円、近くの成約から出した実勢価格は4,200万円。成約の幅は3,600万〜4,800万円で、上限でも評価額と売出価格の両方を下回る。 実勢価格は、評価額と 売出価格の両方を下回る 評価額(路線価で計算) 6,000万円 売出価格 5,000万円 実勢価格(近くの成約) 4,200万円 成約の幅 3,600万〜4,800万円
モデルケース(説明のための仮の物件)。評価額は路線価×土地の面積、実勢価格は近くの土地の成約事例10件の㎡単価の平均×土地の面積。点線は売出価格の位置。棒の長さは金額に比例している。

出典:国税庁「令和8年分の路線価等について」

実勢価格は、近くで売れた土地の㎡単価で確かめる

土地の評価額だけで売出価格を超える物件は、近くで売れた土地の㎡単価に、物件の土地の面積を掛けて実勢価格を確かめます。 その金額が評価額と売出価格の両方を下回れば、積算割合が高くても高値づかみです。

成約事例(実際に売買が成立した事例)は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、誰でも見られます。不動産会社が物件情報を共有するシステム(レインズ)の成約の情報も、個別の取引を特定できない形に加工して載っています。筆者は、同じエリアの成約事例を10件以上並べ、㎡単価の平均と幅を見ます。

モデルケースの続きです(路線価で出した評価額を、実勢価格が大きく下回る地域の例です)。同じエリアの土地の成約事例10件で、㎡単価の平均が14万円、幅が12万〜16万円だったとします。

実勢価格 = 14万円/㎡ × 300㎡ = 4,200万円

幅で見ると、最も安い12万円/㎡なら3,600万円、最も高い16万円/㎡なら4,800万円です。

建物の評価額が残らない物件なので、土地の値段だけで比べられます。実勢価格は、幅の上限の4,800万円(16万円/㎡)でも、評価額6,000万円と売出価格5,000万円の両方を下回ります。このモデルケースは、積算割合120%でも高値づかみの物件です。

検討中の物件で、買付(購入の申込み)の前にできる確かめ方は次のとおりです。

  1. 業者の資料にある積算割合が、全体の割合か、土地だけの割合かを確かめる。土地だけで売出価格を超えるなら、手順2・3で土地の成約事例と比べる。建物が新しい物件は、建物を含めた売買事例も比べる(よくある質問の3つ目)
  2. 不動産情報ライブラリで、同じエリアの土地の成約事例を10件以上拾い、㎡単価の平均と幅(最も安い事例と高い事例の差)を出す
  3. ㎡単価の平均に物件の土地の面積を掛けた金額を、評価額と売出価格の両方と並べる

筆者は、物件の値段を次の順番で確かめます。

物件の値段を確かめる順番と、判断の分かれ目 最初に積算割合(評価額÷売出価格)が合格ラインに届くかを見て、次に実勢価格(近くで売れた土地の㎡単価×土地の面積)、最後に家賃から出す値段(収益還元)を見る。売出価格を実勢価格と家賃から出す値段と比べ、どちらとも相場どおりか安ければ買う候補に残し、少し高ければ値下げ交渉の材料を探す。 まず 積算割合 評価額÷売出価格が 合格ラインに届くか 次に 実勢価格 近くで売れた土地の㎡単価 ×土地の面積 最後に 収益還元 家賃から出す値段 売出価格を、実勢価格と 家賃から出す値段と比べると 相場どおりか安い→買う候補 少し高い→値下げの材料を探す
筆者が買付の前に使う順番。上から順に見る。合格ラインは全体80%以上・土地50%以上。相場どおりか安ければ買う候補に残し、少し高ければ値下げ交渉の材料を探す。

賃料アップ余地のある収益物件の記事では、家賃から値段を出す方法(収益還元)で売却額を試算しています。値下げ交渉の金額の決め方は、この記事では扱いません。

業者には「この物件の近くで売れた土地の㎡単価はいくらですか」と聞いてください。業者の資料の数字を照合する方法は、収益物件の業者の選び方で書いています。

出典:国土交通省「不動産情報ライブラリ」

よくある質問

Q. 積算割合が100%を超える物件は、割安ですか。

筆者は割安と決めつけず、まず実勢価格を疑います。近くで売れた土地の㎡単価に土地の面積を掛け、評価額と売出価格の両方と並べて確かめます。

Q. 業者の資料の積算割合は、全体と土地だけのどちらで見ますか。

両方を見ます。土地だけで売出価格を超える物件は、土地の成約事例と比べれば高値づかみかどうかが分かります。

Q. 建物が新しい物件も、土地の値段だけで比べますか。

土地だけでは比べません。筆者は、保有した後に売るときの値段を考えるため、築10年や15年の直近の売買事例も複数並べます。

まとめ

積算割合は、売出価格を金融機関が見る評価額でどこまで裏付けられるかを示し、筆者が物件を選ぶときに最初に見る数字です。積算割合が高い物件が悪いわけではありません。

ただし、価格が高いか安いかは、積算割合だけでは判断できません。買付の前に、次の2つを並べてください。

  • 全体と土地だけの積算割合
  • 近くで売れた土地の㎡単価に土地の面積を掛けた金額(実勢価格)

物件は積算で選び、拡大の計画は金融機関の評価を軸に考えてください。そのうえで、売出価格が高いか安いかを、積算割合と実勢価格の2つで自分で測ってください。


この記事を書いた人:本業を持ちながら、収益物件を複数保有しています。宅地建物取引士・相続診断士。150人以上の資産拡大を支援してきました。自分の1棟目は、買った時点で借入が評価額を上回っていました(実質債務超過)。

どの成約事例と並べるべきかは、物件の築年数や地域で変わります。検討中の物件の積算割合と実勢価格を、下記の無料相談で一緒に確かめられます。これから1棟目を探す方も、勧められている物件で相談できます。

このサイトでは、積算評価をもとにした物件の判断基準を発信しています。

無料相談では、金融機関の目線でバランスシートを引き直し、今後の拡大戦略を一緒に考えます。業者から提案を受けた物件の無料査定や、判断のセカンドオピニオンも行っています。まず60分でお話を伺います。

少しでも気になることがある方、話を聞いてみたい方、物件のセカンドオピニオンがほしい方、購入を迷っている方は、ぜひ公式LINEを友だち追加して、お気軽にご相談ください。友だち追加のあと、今の状況やお悩みを、トークにそのまま書いてお送りください。

公式LINEで、無料相談を申し込む

タイトルとURLをコピーしました